この10年における格闘シーンで、鉄拳シリーズがストリートファイターと並んでメインストリームの中心にあったことは今更言うまでもないだろう。

 鉄拳6とともに幕を開けた2010年代は、鉄拳タグトーナメント2を経て、2015年からは鉄拳7の時代へと突入した。

 この10年間で最高と謳われる10試合を振り返ろう。


Nin vs Rip/Evo グランドファイナルズ (2010)

 2010年、Evoのグランドファイナルズで、韓国のパク・“Nin”・ヒュンキュとアメリカのリーパル・“Rip”・パーブーが対戦した。

 試合はNinがRipをスイープし、西洋の選手が初めて韓国鉄拳界のレベルの高さを体感した試合となった。

 多くのファンにとって、この一戦は韓国勢が鉄拳を支配するきっかけとなった試合として記憶されている。


Bronson Tran vs Knee/Evo グランドファイナルズ (2013)

 Evo 2013では、鉄拳タグトーナメント2が大会の花形イベントとなった。

 グランドファイナルズは、ジャエ・ミン・“Knee”・バエがアメリカのブロンソン・トランに3-1で勝利。現在では生ける伝説となったKneeの存在が、鉄拳ファンの間で認知されるきっかけとなった。

 Kneeはデビル仁のパートナーにブルースを選んで周囲を驚かせ、ゲームに対する深い知識と洞察をみせつけた。


JDCR vs Knee/ファイナル・ラウンド XVI グランドファイナルズ (2013)

 2013年、Kneeは鉄拳で無敵を誇っていた。この韓国のトッププロは、ランキングナンバー1にして、Evoの王者にも輝いていた。

 しかしファイナル・ラウンド XVIのグランドファイナルズの相手、キム・“JDCR”・ヒュンジンは一味違った。

 JDCRは三島平八とアーマー・キングのコンビで“鉄拳の神”Kneeを3-0でスイープし、世界に衝撃を与えてみせた。


Saint vs Chanel/キング・オブ・ザ・アイアンフィスト・トーナメント グランドファイナルズ (2016)

 鉄拳ワールドツアー(TWT)にファイナルズが創設されるまで、TWTの最終戦は『キング・オブ・ザ・アイアンフィスト・トーナメント』だった。2016年大会のグランドファイナルズは、カン・“Chanel”・ソンホとチョ・“Saint”・ジンウによる韓国人対決となった。

 両者は韓国鉄拳界において、決して交わることのない二つの線といえる存在だった。ChanelはKneeと親友の間柄で、Saintはエコー・フォックスでJDCRのチームメイトだった。両者はこのマッチアップで、自分のためだけでなく友のためにも戦った。

 シリーズはSaintが見事な逆転劇をみせ、3-2で制した。Chanelは最後にジャック7のボディスラムを食らうという屈辱的な負け方となったが、歓喜するSaintの涙をぬぐってやるなど、類まれるスポーツマンシップを披露した。



JDCR vs Knee/REVメジャー グランドファイナルズ (2017)

 2人の鉄拳の神がREVメジャーのグランドファイナルズで再び雌雄を決した。

 Kneeはフェンを使い、JDCRはドラグノフを使用した。

 JDCRの戦略はシンプルなもので、カンフーステップをするKneeとの距離を詰め、カウンターからコンボを狙った。

 JDCRはこの大会のウィナーズファイナルズとグランドファイナルズの両方でKneeを下すダブルを達成し、これにはライバルのKneeも脱帽するほかなかった。

 普段の両者は握手を交わすような間柄ではないが、Kneeが手を差し出すと、JDCRは快くそれに応じた。


Saint vs Qudans/鉄拳ワールドツアー ファイナルズ (2017)

 2017年のTWTファイナルズで、Saintはセミリタイアから復帰したばかりの韓国のレジェンド、ソン・“Qudans”・ビョンムンと対戦した。

 Qudansは得意のデビルでSaintに立ち向かった。鉄拳7では新しくレイジアーツが導入されていたが、Qudansは辛抱強くそれを発動させる瞬間を待ち、Saintからラウンドを奪っていった。

 ブラケットがリセットされたあと、Qudansは一方的な展開でSaintを3-1で下し、10年ぶりにタイトルを手にした。


Lil Majin vs JDCR/ Evo ウィナーズ決勝 (2018)

 アメリカの人気プロ、テレル・“Lil Majin”・ジャクソンは、韓国のレジェンドJDCRとEvo2018で対戦し、アメリカ勢がまだまだ韓国勢に対抗できることを証明してみせた。

 ゲーム1はJDCRが制したが、Majinはすかさずゲーム2と3を連取した。

 迎えたゲーム4、JDCRは見事なレイジドライブで追いつくが、Majinは最後は確実にジャブを当ててシリーズを制し、2018年最大の番狂わせを演じてみせた。


Qudans vs Rangchu/TWTファイナルズ グランドファイナルズ (2018)

 Qudansは2018年のTWTファイナルズで、韓国の新進気鋭の“パンダ使い”ジョン・“Rangchu”・ヒョンホと顔を合わせた。

 パンダは鉄拳で最弱レベルのキャラとみなされているが、変則的な動きによってQudansのコンボをかわし続け、攻めに転じれば素晴らしいコンボを繰り出し、番狂わせの予感を漂わせる。

 Qudansはデビル仁を使ってアグレッシブな試合運びをみせるが、打撃を当て損ね続けた結果、Rangchuに何度もカウンターのチャンスを与えてしまう。最後は決定的なキックを外してしまうと、万事休す。Rangchuが大方の予想を覆し、2018年のTWTファイナルズの王者に輝いた。


Anakin vs Knee /CEO:デイトナ グランドファイナルズ (2019)

 2019年のCEO:デイトナのグランドファイナルズでは、アメリカのホア・“Anakin”・ルーがKneeと対戦。この試合はこの年最大の逆転劇として記憶されることになった。

 Anakinは序盤から快調に飛ばし、KneeのDJから2-0とリードを奪った。するとここでKneeがファイターをポールへと切り替える。

 このスイッチ後、Kneeは圧倒的な攻勢を展開し、次から次へラウンドをものにしていった。最終ゲームではAnakinも粘りをみせたが、Kneeの勢いを止めることはできず、2-3と逆転で金星を逃した。


Knee vs Arslan Ash/EVO グランドファイナルズ (2019)

 アルサン・“Arslan Ash”・シディケは2019年の鉄拳の顔だった。台頭著しいパキスタン鉄拳界の顔となるだけでなく、史上初めて同じ年にEvo JapanとEvoを制する選手となった。

 EvoのグランドファイナルズでKneeへの挑戦権を手にすると、鉄拳の神を相手に臆することなく挑み、ゲーム1ではKneeの三島一八を打ち破った。するとKneeはここで奥の手を繰り出し、デビル仁へとスイッチした。

 それでも2-2で迎えたゲーム5、Arslanは凄まじいパフォーマンスを披露し、Kneeを3-0でスイープ。世界中がKneeも人の子であると再確認する結果となった。

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