Valveは『ザ・インターナショナル2020』終了後、来季よりDotaプロサーキット(DPC)のシステムを変更し、地域ごとのリーグ戦を導入すると発表した。

 来季のDPCがどのような形となるか、詳しく説明しておこう。


地域リーグ

 新システムでは、DPCは秋、冬、春の三つのシーズンに分けられ、シーズンごとに6つの地域リーグが開催される。6つの地域とは、北アメリカ、南アメリカ、ヨーロッパ、CIS、中国、東南アジアのことである。

 各シーズンは各リーグの上位チームが出場するメジャー大会によって締めくくられる。

 秋季リーグは10月5日から11月15日にかけて開催され、秋季メジャーは12月7日から19日にかけて開催。また、冬季リーグは1月4日から2月14日にかけて開催され、冬季メジャーは3月8日から20日にかけて開催。最後の春季リーグは4月12日から5月23日にかけて開催され、春季メジャーは6月21日から7月3日にかけて開催される。

 なお、DPCのラストを8月開催の『ザ・インターナショナル』が飾るのは、これまでと変わらない。

 各地域リーグの賞金総額は28万ドルで、8チームずつの1部リーグと2部リーグに分けて開催される。つまり世界中で合計96チームがDPCに参戦することになる。

 地域リーグは6週間にわたって総当たり戦を開催。各週ごとの開催日は3日間で、各試合は3試合2戦先勝方式で行われる。

 DPCポイントは各リーグの1部リーグ上位5チームに与えられ、地域によって出場枠や条件は異なるが、上位チームにはメジャーへの出場権も与えられる。

 各1部リーグの優勝チームは賞金3万ドルと500DPCポイントを獲得し、メジャー大会プレーオフへの出場権を手にする。また、2位のチームは賞金2万8000ドルと300DPCポイントを獲得し、メジャー大会のグループステージへの出場権を手にする。

 なお、各1部リーグで3位か4位に終わった場合は、自動的にグループステージへの出場権を手にすることはできない。ヨーロッパと中国で3位と4位に入ったチームは、後述のワイルドカード・ステージからの進出となる。また、北アメリカ、東南アジアのリーグでは、3位チームのみがワイルドカード・ステージへの出場権を手する。

 もしかすると、リーグ戦の導入の利点は、昇格・降格システムの導入にあるかもしれない。

 各シーズン終了後、1部リーグの下位2チームと2部リーグの上位2チームが入れ替わる。また、2部リーグの下位2チームは、オープン予選を勝ち上がった2チームと入れ替わることになる。

 このシステムにより、新進気鋭の選手やチームに下克上のチャンスが与えられることになる。また、上位チームにとってはシーズンを通して気が抜けない戦いが続くため、全体的な試合のクオリティが高まることが期待される。

 こちらの表に、各リーグの最終順位に応じた獲得賞金およびDPCポイントが記載されている。

Credit: Valve Corporation

 このリーグ戦の導入によって、これまで二番手、三番手に甘んじてきたチームにチャンスが与えられるだけでなく、ファンにとってもお気に入りのチームをフォローしやすいシステムが出来上がったといえよう。

 各地域のリーグは毎週決まった時刻に開催され、1部リーグの試合はすべてスタジオから中継される。また、2部リーグの試合はすべてDota TVで中継される。

 こちらが各地域の試合スケジュールだ。すべて3試合制2戦先勝方式で行われる。なお、時刻は太平洋標準時となっている。

Credit: Valve Corporation

 新リーグの初代所属チームとしてシードされるチームは、Valveが過去の成績に応じて選定を行う。また、各チームはシーズン開幕前に、どの地域のリーグに所属するかあらかじめ宣言しておく必要がある。各リーグの残りの出場枠を巡っては、TI10後に予選を開催し、所属チームを決定する。

 また、各チームがぞれぞれの地域リーグに所属するためには、少なくともメンバーのうち3人が、同地域に住居を構えている必要がある。このほか、各リーグ4試合までなら代理選手を起用することも可能で、同一リーグ内でなければ他チームからのレンタルも問題ない。

 なお、チームが所属するリーグを変更する場合は、移籍先の地域のオープン予選を勝ち抜く必要がある。

 リーグ戦開幕後は、該当シーズンのメジャー終了まではメンバーを変更することはできない。メンバー変更はメジャー終了後から次のシーズンの開幕まで可能で、交代選手一人あたり、その時点で獲得しているDPCポイントに対して15%減のペナルティが与えられる。



メジャー

 各シーズン終了後には18チームが出場するメジャー大会が開催され、各チームは賞金総額50万ドルと2700DPCポイントをかけて激突する。

 メジャーの変更点は三つあり、各地域ごとに割り振られた出場枠が年間を通して変わらないこと、予選を行わないこと(地域リーグがその代わりとなるため)、そして本大会が三つのステージに分けて開催されることだ。

 各地域に与えられるメジャーの出場枠は、所属チームの実績に応じて配分される。出場枠はヨーロッパと中国が「4」、北アメリカ、東南アジアが「3」、CISと南アメリカが「2」となっている。

 メジャーのワイルドカードステージでは6チームが2試合制の総当たり戦を行い、上位2チームがグループステージに進出する。

 ワイルドカードステージに出場するチームは、ヨーロッパと中国のリーグ戦3位・4位のチーム、北アメリカと東南アジアのリーグ戦3位のチームである。

 そのなかからグループステージに進出できるのは2チームだけで、残りの4チームは手ぶらで家路につくことになる。

 グループステージは8チームによる2試合制の総当たり戦で、上位2チームはプレーオフのアッパーブラケットに進出し、3位から6位のチームはロワーブラケットに進出する。下位2チームはそのまま敗退となる。

 グループステージに出場するのは各リーグで2位に入ったチームと、ワイルドカードステージで勝ち残った2チームである。

 メジャーのプレーオフは慣れ親しんだダブルイリミネーション方式のトーナメントとなるが、現行の大会が16チームなのに対し、新方式では12チームによるトーナメントとなる。

 アッパーブラケットは各リーグの優勝チームとグループステージの上位2チームで構成され、ロワーブラケットはグループステージで3位から6位に入ったチームで構成される。

 なお、賞金獲得チームの数にも変更があり、来期からは上位8チームにしか賞金は与えられない。

 こちらが来季メジャー大会における順位ごとの獲得賞金だ。

Credit: Valve Corporation

ザ・インターナショナル

 現行のDPCと同じく、DPCランキングの上位12チームがザ・インターナショナルへの出場権を手にする。残りの出場枠は、各地域上位8チームによるファイナルチャンス予選で決定する。

 ザ・インターナショナル最大の変更点は、オープン予選がなくなったことだろう。

 それはつまり、Valveが地域リーグと新方式のメジャー導入によって、各チームにシーズンを通したコンスタントなパフォーマンスを期待しているということだろう。

 現在のDPCの方式だと、各チームはメジャー大会で二度以上ベスト4に入れば、残りは欠場してもTIへの出場権を確保できる。それがだめでも、オープン予選を突破してザ・インターナショナルに出場するチャンスが残されていた。

 つまり来季からは、TI8でOGが披露したような、オープン予選からの下克上優勝というシンデレラ・ストーリーは観られなくなった。その一方で、各チームにはシーズンを通して高いレベルのパフォーマンスが期待できそうだ。

 新しいシステムでは、各リーグの賞金総額が28万ドルで、さらに各メジャーの賞金総額は50万ドルと、その合計額は650万ドルとなる。これは賞金総額100万ドルのメジャーが5大会、30万ドルのマイナーが5大会ある今季の賞金総額と、まったく同じ金額になる。

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