Riot Gamesによるキャラクターベースの新たなシューティングゲーム『ヴァロラント』はクローズドベータの段階に入ってまだ1ヶ月あまりだが、このゲームの周辺は非常に大きな盛り上がりを見せている。

 今後トップレベルのEスポーツに上り詰めることが予想されるが、すでに『Apex Legends』や『オーバーウォッチ』、さらには『カウンターストライク:グローバルオフェンシブ(CS:GO)』など他のシューティングゲームの大物プロ選手たちがそれぞれのゲームを後にし、まだ生まれて間もない『ヴァロラント』のコンペティティブシーンで腕試しをスタートさせている。

 アメリカの『CS:GO』プロ選手ジャコブ・“yayster”・ホワイトエーカーは、強豪チーム以外に対する組織的なサポート不足や、各ゲームシーンのリーグ再編をその理由に挙げている。

 個人ツイッターアカウントで投稿した声明の中で、yaysterはまず、『CS:GO』のプロ選手たちは誕生間もない競技シーンを容易に支配できるという理由で『ヴァロラント』に飛びついているという考え方を否定している。

 むしろ、『CS』の強豪チーム以外に対して投資を行おうとするEスポーツ団体が存在せず、別のゲームでゼロからスタートする以外にほぼ選択肢がなくなっていることが、『CS:GO』のプロ選手たちの『ヴァロラント』への大移動の大きな要因になっていると指摘した。

 「僕が周囲で耳にした話によれば、CSのチームを探している団体もあるようだ。だがトップ10やトップ20より下のチームを欲しがっている団体はほとんどない。彼らが望んでいるのはすでに実績のあるチームだけだ。他のプレイヤーたちがアナリストやスポーツ心理学者や設備を揃え、何度もブートキャンプを行い、そして何より報酬を得ている中で勝負するのは非常に難しくなっている」

 「不可能というわけじゃないし、成功するためにそういったものが100%必要というわけではないが、プラスになることは確かだ。プレイヤーたちが自分のゲームだけに集中し、生活のストレスから解放されることは間違いない」

Credit: Riot Games

 yaysterはまた、現在の新型コロナウイルスによるパンデミックも一因に挙げている。世界経済が深刻な影響を受けている結果として、各団体は実績のないチームと契約を交わすリスクを冒そうとはしないようになっている。むしろ『ヴァロラント』のチームを立ち上げる方が各団体によってはるかに魅力的な試みだとyaysterは考えている。

 「ヴァロラントのようなゲームがあるのにCSの下位ディビジョンに投資を行う理由はないと思う。まだシーンが確立されていないところに資金をつぎ込む方が各団体にとって有意義だ。今はゴールドラッシュのようなものだ。20位や30位クラスのチームに投資をしても仕方がない」とyaysterは語る。

 団体からの支援の欠如は、特に北アメリカのチームであるスウォール・パトロールのメンバー4人の離脱へと繋がった。その離脱メンバーのうちヴィクター・“Food”・ウォン、ライアン・“freakazooid”・アバディール、ジョーダン・“Zellsis”・モンテムーロの3人は『CS:GO』を引退し、『ヴァロラント』でそれぞれのキャリアを続けていくことになった。

 yaysterは、『FLASHPOINT』や『ESLプロリーグ(EPL)』などいくつかの『CS:GO』リーグの構造再編も、一部の選手たちがシーンを去らざるを得なくなった理由のひとつに挙げている。

 特に、『FLASHPOINT』や『EPL』が参加チームのリストに「パートナーチーム」を含めていることだ。パートナーチームはリーグと契約を交わしたチームやリーグへの投資を行ったチームであり、パフォーマンスにかかわらずリーグ参加を保証される。

 「FLASHPOINTの場合は、僕の古巣(オーグレス)の戦いぶりも悪くはなかった。いくつかのパートナーチームを上回っていた。それでもリーグ参加のためにはまた1ヶ月の(北米/EU)予選を突破しなければならない。戦うのは嫌じゃない。ただ、パフォーマンスよりも経済的なコネクションでリーグに残ることができる人たちがいるということに、ある程度はモチベーションを削がれてしまう」とyaysterは語る。

Credit: Riot Games

 自分なりの理由の説明に続いて、yaysterは、強豪チーム以外のプロ選手たちが今後も『CS:GO』でキャリアを続けていこうとする上での見通しの暗さを語っている。

 「チーム作りを始めるにはフリーエージェントを他に5人見つけるか、MDLチームを見つけるかだ。百戦錬磨のプレイヤーたちであったとしても、組織を構築していくには長い時間がかかることになる。デフォルト、プロトコル、リアクション、ローテーション、マッププール、スポット…。そういったものを作り上げていくには何ヶ月もの練習と経験が必要だ」

 「そのプレイヤーたちやスタイルがチームとして一緒に“機能”するという保証もない。プレイヤーを入れ替えてもう一度作り直さなければいけない可能性も十分にある。どれだけの期間になるかも分からないが、報酬も支払われないままそれを続けつつ、自分よりはるかにリソースに恵まれた相手と戦わなければならない」

 一言で言えばその「タフな状況」が、キャリア続行を望む多くのプロ選手たちが『ヴァロラント』への転向を余儀なくされている理由だとyaysterは述べている。

 「彼らを責めるつもりはない。収入を必要としている者もいるし、ひとつのゲームを何年もやってきて新鮮なスタートを望んでいる者もいる。大半は、このチャンスを稼ぎに繋げたいと考えているわけじゃない。ただ、それしか手がないんだ」