シリーズ 「EVO・トップコンテンダーズ」は、Evo 2019で競い合うトップ選手たちを紹介する企画であり、これまでの歩みから、彼らの強みや弱み、そして最大の格闘ゲームトーナメントたるEvoで、果たして勝ち残れるかを見ていくものだ。

 『鉄拳』プロシーンは韓国と日本が支配的であるゆえに、その他のアジア格闘ゲームコミュニティでは何ができるんだろうかって思うかもしれない。そんな時に、 “Arslan Ash”が現れた。

 もしこの名前にピンとこないなら説明すると、Arslan Ashはパキスタンの選手であり、2019年のEvo Japanにて「鉄拳の神」 “Knee”ことペ・ジェミンをルーザーズに送り込んだことで名が知れ渡ったのだ。

 日本へ向かうのはArslan Ashにとって容易ではなかった。パスポートの問題により、Arslan Ashは大会数日前にいくつかの国を飛び回らなければならなかった。幸い、試合までには日本に到着した。Arslan Ashは休みもなく、大会の準備もできていたかった。ところがそこで彼の生存本能が呼び覚まされる。ただ、勝ちたかったのだ。

「ぼくはとても苦しんだから、勝ちたかっただけなんだ」Arslan Ashは、Evo Japanのインタビューでそう語った。

 そして、彼はやり遂げる。 “JimmyJTran”ことジミー・トラや “チクリン”らを打ち負かしたように、パキスタンから来た未知の選手は考えられるべき力だった。

 大胆、かつ容赦のないArslan Ashは最終的に “AK”アレクサンドル・ラベレスとの決勝戦で勝利し、Evo Japanのチャンピオンとなって帰国したのだった。


今年の評価

 あいにく、Arslan AshのEvo Japan 2019での結果は『鉄拳』ワールドツアー(以下、TWT)の一部ではなかったため、グローバルリーダーボードではかなり低い位置にいる。Arslan Ashは現在43位で、チャレンジャー大会で1勝しているだけだ。

クレジット:Tekken

Thaiger Uppercut (TWTチャレンジャー)

 Arslan Ashが初めてTWTに登場したのは、2019年Thaiger Uppercutだった。Arslan Ashはグランドファイナルまで闘い、再びKneeと相まみえる。

 試合は拮抗し、Arslan Ashは重い攻め手の戦略にこだわり、Kneeのアグレッシブなデビル仁に対抗した。

 5ゲーム目に、Arslan Ashが突破口を切り開く。最終ラウンドではKneeのヘルスイープをブロックする、素晴らしい動きの読みを見せ、とどめを刺してタイトルを獲得した。


Evo Japan 2019 (インディペンデント)

 Arslan Ashの強みはシンプルな攻め手による戦略にこだわっていることだ。三島一美のようにシンプルかつ安全なキャラによって、Arslan Ashはほとんどの選手を相手に素早いジャブとローキックを強力な攻撃として活用している。

 AKを相手にした試合では、Arslan Ashのプレイスタイルはそれらしくないものの、彼が与えているダメージの量を背いている。素早い1、2回のコンボで、非常に速く大量のダメージを生み出すことができるのだ。

 効果的な攻撃に加え、Arslan Ashは投げの瞬間を見切る素晴らしい選手だ。下の試合ハイライトでは、AKは必死に下段から仕掛けようとするが、最終的にはArslan Ashにやりかえされている。


World Showdown of Esports 7 (インディペンデント)

 Arslan Ashは同じテクニックを持つ選手を弱点としている。最近のWorld Showdown of Esports 7にて、JimmyJTranは戦略をあっさりと理解した。試合では、JimmyJTranはArslan Ashの仕掛けを餌に、じっくりと体力を削ぎ落していった。悲しいことに、三島一美の空中コンボはとても弱く、試合でArslan Ashを埃の中に残していった。


“パキスタンの驚異”はEvoで花開くか

 ここまで見てきたように、今年のEvoこそArslan Ashは本当に行き当たりばったりになる可能性がある。彼が韓国の選手や他のアジアの選手に対して上手く相手に出来ていることはわかっているが、西半球はまだ未知である。

 JimmyJTranや “Anakin”ことホア・ルーがいるため、Arslan Ashはアメリカ人選手による『鉄拳7』のプレイに不慣れかもしれない。にもかかわらず、彼のスキルと勇敢さは、少なくともトップ8には入り込むはずと見ている。

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