中国のリーグ・オブ・レジェンド・プロリーグ(LPL)と韓国のリーグ・オブ・レジェンド・チャンピオンズ・コリア(LCK)のスプリング・スプリットの上位4チームが、『2020ミッドシーズンカップ(MSC)』で激突する。

 この二つのプロリーグは世界最高峰と目されているが、そのプレースタイルはかけ離れたものだ。

 LPLは攻撃的で知られ、数的不利の状況でもチームファイトを厭わない血に飢えた狼の集団だ。

 一方のLCKは世界で最も規律が重視されるリーグとして知られる。すべての動きが計算づくで、キルより目標物の破壊を重視する。

 この二つのハイライト動画は例外的なものではなく、両者のプレースタイルを反映するものだ。さらにスプリング・スプリットの最終スタッツを比較すると、両者の違いが浮き彫りになった。


1.最多キル

 ここ数年のメタが目標物を巡るチーム同士の小競り合いを奨励するものであるとはいえ、トップ5の選手の合計キル数で、LPLの方がLCKより100近くも上回ったという事実は驚きに値しない。個人に絞ってみても、LCKで196と最多キルを記録したキム・“Deft”・ヒュッキュですら、LPLではトップ3にも入ることができない。

 さらに2位以下は大きく離れており、パク・“Teddy”・ジンソンのキル数はわずか183で、こちらはLPLのトップ5にも入れない数値だ。一方、LPLのディン・“Puff”・ワン、ユアン・“Cryin”・チャンウェイ、シャオ・“Jiumeng”・ジアハオはいずれも「200キル超え」を果たした。

 両リーグで最多キルを達成したのがボットレイナーであることにも言及しておいた方がいいだろう。なお、このなかでCryinのみがミッドレイナーである。


2.最多デス

 度重なるチームファイトは多くのキルにつながるが、当然多くのデスにもつながる。

 血に飢えていることには代償が伴う。カン・“Theshy”・ソンロクは攻撃的なスタイルで知られるが、LPL・スプリング・スプリットでは167回と最多デスを記録している。

 インビクタス・ゲーミングを相手にトップレーンで網を張れば、大きな戦果が期待できるだろう。

 Theshyが際立っているのは、ここにランクインしている唯一のトップレイナーであるという事実だ。トップ5に入るほかのLPLの選手はいずれもサポートの選手。彼らはそもそもがボットレイナーを輝かせるために泥を被る役回りなので、多くランクインしても驚きはない。

 一方のLCKでは、トップレーンは最も不安定なレーンで、ジャングラーはサン・“Flawless”・ヨンジュンただ一人だ。APK・プリンスのチームメイトであるジオン・“ikssu”・イクスと共にトップ5入りを果たしている。


3.最多KDA

 最多キルを記録すれば自動的にKDA(キル・デス・アシスト)のランキングに入れるわけではない。なぜならデスを抑えなければ、優秀なアベレージを収めることはできないからだ。それにも関わらず、LPLのトップ3の選手のKDAスコアは、LCKのトップ3を完全に上回っている。

 インビクタス・ゲーミングのPuffは最多キルを記録したが、チームの大胆なプレースタイルもあってデスも多く、KDAではトップ5に入ることができなかった。

 LPLではエドワード・ゲーミングのワン・“Hope”・ジエとeスターのCryin、そしてLCKではT1のパク・“Teddy”・ジンソンとゲン・Gのパク・“Ruler”・ジェヒュクのみが、キルとKDAの双方でトップ5入りを果たしている。

 なお、KDAはそのほかのランキングと比べて、1つのポジションの選手に独占されるということがなかった。両リーグともにトップ、ジャングル、ミッド、ボットレイナーと、満遍なくランクインしている。なお、サポートの選手はランクインしていない。

4.1分間あたりのチャンピオンに対するダメージ数

 もちろんKDAがすべてではない。インビクタス・ゲーミングはKDAの平均が低く、トップレイナーはリーグで最多デスを喫しているものの、レギュラーシーズンを首位で終えているのだ。

 インビクタス・ゲーミングのスーパースター・キャリーであるTheshyとミッドレイナーのソン・“Rookie”・ユージンは、それぞれ3位と4位に入った。一つのレーンが潰されても、もう一つのレーンで主導権を握り、チームを勝利へ導く活躍をみせているのだ。

 また、Theshyはトップレイナーとしては唯一ランクインを果たした。そのほかの選手は、いずれもボットかミッドレイナーである。

 元チームメイトであるトップ・Eスポーツのユ・“JackeyLove”・ウェンボは、レギュラーシーズンではわずか6試合しかプレーしていないが、それでも2位に入っており、ADキャリーとしての卓越した技術を証明してみせた。

 一方のLCKで5位に入っているユー・“FATE”・スヒョクは、サンドボックス・ゲーミングの控えミッドレイナーながら、出場7試合でルブラン、ライズ、ビクターなど多彩なチャンピオンを使い分け、いずれも好プレーを披露した。


5.最短ゲーム

 両リーグの平均試合時間はLPLがLCKを1分間下回っているため、最短試合時間でもLPLが大きく下回ったのも驚きではなかった。ファンプラス・フェニックスはビクトリー5を20分以内で片づけてみせたのだ。

 V5が今季1勝も挙げられずに最下位に沈んだ一方、LCKで最短勝利を挙げたサンドボックスも今季低迷し、入替戦でLCK残留を争うはめに陥った。


6.最長ゲーム

 ファンプラス・フェニックスは最短試合を記録したと同時に、最長試合も記録したチームとなった。

 LPLスプリング・スプリットの最終戦で、ファンプラス・フェニックスはトップ・Eスポーツと激闘を展開した。両チームはプレーオフのシード権を争っており、勝敗が最終順位に大きく影響することもあって、一歩も譲らない戦いを繰り広げた。

 ファンプラス・フェニックスは35分まで試合の主導権を握っていたものの、一つのチームファイトで試合の流れが一変し、トップ・Eスポーツがバロンとエルダー・ドラゴンを手にして逆転勝利を収めた。


7.1試合最多キル

 LCKの最長試合は血に塗れた凄惨なものとなった。

 第6週、DAMWON・ゲーミングは4連敗中で、喉から手が出るほど勝利を欲していた。最後のチームファイトでAPK・プリンスを振り切った結果、DAMWONはキル数でAPKを30-21と上回った。

 一方でLCKの最多キル試合は54分間で51キルと、38分間で58キルを記録したLPLの試合に大きく劣った。このLPLの試合ではス・“Southwind”・ツィーリンのタム・ケンチとPuffのエズリアルが見事なバックドアを決めて勝負を決していた。

 なお、インビクタス・ゲーミングとローグ・ウォリアーズの3試合のシリーズは、合計148キルを記録している。


 LPLのチームはハイリスク・ハイリターンの戦術を採用する傾向があるものの、展開次第ではマクロな試合運びもできることがわかった。

 その証拠に、LPLスプリング・プレーオフの準決勝のJD・ゲーミングvsファンプラス・フェニックスの一戦では、33分までキルがなかった。また、インビクタス・ゲーミングはプロチームとしては唯一トップにカリスタを起用し100%の勝率を収めているチームだ。


積極性vsマップ支配:勝つのはどっちだ?

 間もなく開幕するミッドシーズンカップでは、どちらのスタイルが上回るのか注目だ。

 ONE Eスポーツは、チームファイトを恐れないLPLが序盤にペースを握り、目標物を破壊して早々に勝利を手にするとみている。しかしLCKのチームも油断はならない。彼らは堅実にマップを支配し、相手のミスを逃さないの。LPLが一つでもミスを犯せば、流れは一転してLCKに傾くだろう。