シリーズ 「EVO・トップコンテンダーズ」は、Evo 2019で競い合うトップ選手たちを紹介する企画であり、これまでの歩みから、彼らの強みや弱み、そして最大の格闘ゲームトーナメントたるEvoで、果たして勝ち残れるかを見ていくものだ。

 すべてのスポーツには、伝説的ともいえるライバル関係が存在する。バスケットボールにはマジック・ジョンソンとラリー・バードがいるし、テニスならばナダルとフェデラーがいる。

 では『鉄拳7』ではどうか?いま、 “Knee”ことペ・ジェミンが鉄拳ワールドツアー(以下、TWT)を支配しているが、すぐそばには “JDCR”キム・ヒュンジンがいる。

 JDCRは『鉄拳』の世界における伝説だ。ほぼ10年間プロシーンのトップであり、2017年に『鉄拳タッグトーナメント2』と『鉄拳7』を優勝。2度、Evoのチャンピオンになったである。

 KneeとJDCRのライバル関係は『鉄拳5』にまで遡る。国際大会から地元大会に出場したとき、決勝でふたりはぶつかってきた。

 『鉄拳7』がリリースされた当初、KneeとJDCRがシーンを支配した。JDCRで最高の成績を残した年は、Evoを含む、未曾有となる11の大会で優勝した2017年である。その年はKneeが不振だったこともあり、JDCRに敵う相手はいなかった。

 だが、2018年はJDCRにとって失速する年となる。シーズン2へのアップデートにより、JDCRがメインで使用している平八に調整が入り、プロの試合で役に立たなくなってしまう。JDCR唯一のメジャー大会での優勝は、ドラグノフを使った、ソウルで行われたKorea Mastersでのものだった。

 JDCRのスランプは、シーズン2でDLCのキャラクターパックがリリースされる2018年の終わりまで続く。このパックには、JDCRお気に入りであるアーマーキングがいた。

 アーマーキングはかつての『鉄拳』シリーズで、JDCRにとって最高のキャラだった。彼はすぐさまにアーマーキングに取り掛かり、以来、彼の持ちキャラとなっているのだ。


今年の評価

 JDCRはTWTリーダーボードで3位に位置し、チャレンジャーチャンピオンシップで1度優勝している。マスターズ大会において、最も優れた結果はBattle Arena Melbourne 11で2位になったことだ。

 JDCRは今年、多くの優勝を飾れてはいないものの、パフォーマンスは一貫しており、大会では常に、少なくともトップ8に付いている。

クレジット: Tekken

Battle Arena Melbourne 11 (マスター)

 JDCRはアーマーキングによる、巨大なダメージの運び屋だ。グラップルを多用する動きをうまく使い、ランニンググラップルによって試合を決める傾向がある。

 しかしながら、JDCRはディフェンスを保つのに苦労している。アーマーキングのダッシュに依存しがちで、距離を置いたりディフェンスをしたりせず、狩りたてるコンボやテクニックをたくさん行う。

 Battle Arena Melbourne 11のグランドファイナルでは、ジャブからのカウンターから、“Ulsan” ことスフン・リムに敗北する。


Electric Clash(チャレンジャー)

 JDCRが今年最高の大会となったのはElectric Clashだった。ウィナーズ準々決勝にて“Shadow 20z”ことマーキス・ヨルダンに負けたものの、ルーザーズからグランドファイナルに戻り、再びShadow 20zと向かいあう。

 JDCRはふたたび平八を使った。まだ平八を使いこなせることを示し、チャンピオンシップで6試合連続で勝利する。JDCRは平八の強打による、破壊的なレイジアーツで大会を終わらせた。


World Showdown of Esports 7 (インディペンデント)

 World Showdown of Esports 7では、解説を務めた”Tasty Steve ”ことスティーブ・スコットと “Rip”ことリーファル・パーフーが、JDCRによるアーマーキングのムーブリストの限られた使い方について語っていたが、RipはJDCRが動きの幅を広げており、複数のグラップルとサイドステップからのキックといった、新しいテクニックを加えていることを指摘した。

 JDCRのキャラクタ―の重いダメージについての専門知識において右に出るものはいない。ルーザーズ決勝にて “Anakin”ホア・ルーに対する、正気じゃないレイジアーツによる逆転劇を見せたように、JDCRは常に巨大な逆転を行えるのだ。


JDCR、Evoでの闘いは

 JDCRの一貫したプレイは、少なくとも大会のトップ8に入るだろう。アメリカの選手と対戦する経験も豊富で、アメリカ人最高の選手と闘うことにも問題はない。

 彼は長年のライバルであるKneeと当たらなければならないが、それ以外にはJDCRは3つめのEvoタイトルを獲得するチャンスがある。

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