『ザ・インビテーショナル2015(TI5)』の優勝メンバーであり、Dota2史上屈指のオフレイナーと名高いサーヒル・“Universe”・オーロラが現役引退を発表した。

 UniverseはTwitterのアカウントで「競技Dotaから引退することにした。僕は何事に取り組むにもオール・オア・ナッシングな性格で、それはDota2も例外ではない。過去の10年にわたって僕はこのゲームと競技にすべてを捧げてきた。それは素晴らしい体験だった」とコメントしている。

 Universeの引退発表は、TI5を共に制したイーヴル・ジーニアスズ時代のチームメイトであるピーター・“ppd”・ダガーの引退発表からわずか数日後のことだった。

 Universeはゲームの歴史上でも屈指のオフレイナーとして、そのプロキャリアに幕を閉じることになった。彼はダーク・シーアやタイドハンターの熟達したプレーでしられ、フェイスレス・ヴォイドやアースシェイカーについても、この2体のチャンピオンがオフレーンで使われていた時代には得意としていた。

 Universeはダーク・シーアで126勝を挙げており、これは2位以下を34も突き放した圧倒的な数字となっている。彼はまた、フェイスレス・ヴォイド(プレイヤー・ヒーロー・コンボのトップ1000)とタイドハンター(同ヒーローを30戦以上使用した選手に限定)を使った最高勝率を残している。

 また、彼のアースシェイカーでのプレーもファンの間では語り草となっている。TI5のグランドファイナルズでは、Universeは同ヒーロー史上最もアイコニックなプレーとなっている「600万ドルのエコー・スラム」を披露し、イーヴル・ジーニアスを勝利へ導いた。

 Universeは黎明期からDota2のプロシーンでプレーしており、最初は2011年の『ザ・インターナショナル』で7位に入ったオンライン・キングダムの控え選手としてキャリアをスタートさせた。

 Universeはその後、2013年にディグニータスのオフレイナーとしてプロシーンに復帰。その後、彼は欧米で最高のオフレイナーとして名を馳せるようになり、TI3ではチームを9位に導いた。

 2014年、Universeはppd、アルトゥール・“Arteezy”・ババエフ、クリントン・“Fear”・ルーミス、ルドウィグ・“zai”・ワールベリと共に、北アメリカのレジェンドチーム、SADBOYSの一員となった。SADBOYSはやがてイーヴル・ジーニアスズに買収され、世界屈指のチームへと成長。TI4では3位に入った。

 2015年になるとArteezyとzaiがチーム・シークレットに移籍したため、チームはカーティス・“Aui_2000” ・リンと、当時はまだ無名の神童だったスメイル・“SumaiL”・ハッサンをチームに加えた。新チームは当初、前チームほど強力ではないとみられていたが、あれよあれよとTI5を勝ち進み、見事に優勝を果たした。そのなかで、Universeは大会を通してオフレーンで卓越したプレーを見せ続けた。

 2016年、UniverseはDota2史上最もクレイジーなロスター・シャッフルに巻き込まれ、当時のイーヴル・ジーニアスズが依然として世界最高のチームだったにも関わらず、UniverseはArteezyとともに移籍期間終了直前の3月にチーム・シークレットに移籍した。そして6月、イーヴル・ジーニアスズとシークレットが共にマニラ・メジャーで敗退すると、Universeはシークレットからイーヴル・ジーニアスズに復帰する。このロスターチェンジによってイーヴル・ジーニアスズはTI6はオープン予選からの参加となったが、本大会では3位に入り、3大会連続でトップ3に入るという快挙を成し遂げた。

 TI6後のロスターシャッフルの結果、ppdは現役を退いてチームのCEOに主任。さらにFearが一度目の現役引退を宣言した。イーヴル・ジーニアスズはTI7では9-12位とほろ苦い結果に終わり、大会後にUniverseは退団を決意する。

 Universeは2018年に東南アジアのフナティックに移籍するが、TI18では13位-16位とふるわなかった。そのあと北アメリカに戻って、のちにフォワード・ゲーミングと名前を変えるクインシー・クルーに加入したが、2019年3月に活動を休止した。

 UniverseはTI9後に活動を再開し、ppdと共にヨーロッパのニンジャス・イン・パジャマスに加入した。しかしチームは新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、Universeを突如リリース。これはDotaプロサーキットが2020-21シーズンから地域色を強めていくなかで、チームがヨーロッパ中心の選手編成へと舵を切ったためだった。

 Universeは「ようやくこれまでとは違った興味の対象を探す時期が訪れた。ファンと過去のチームメイトたちに感謝したい。思い出は素晴らしいし、決して忘れることはないだろう」とコメントしている。