ファンにとってお気に入りのプロ選手やチームに迫る連載『Eスポーツヒーロー』。今回取り上げるのは、『ブリズコン2019』で開催された『ハースストーン・グローバル・チャンピオンシップ』で、女性として初めて優勝を飾ったシャオメン・“VKLiooon”・リーだ。

 2019年の『ハースストーン・グローバル・チャンピオンシップ』のグランドファイナルは、歴史に残るイベントになった。それは史上最も一方的な展開となった試合内容のためではなく、“誰が”勝ったかによって、歴史に刻まれることとなったのだ。

 シャオメン・“VKLiooon”・リーはグランドファイナルでブライアン・“bloodyface”・イーソンを3-0と圧倒し、中国人として、そして女性として初めて『ハースストーン』の世界王者になった。さらにそれだけでなく、彼女はブリズコンのメジャーEスポーツのタイトルを手にした初めての女性となった。

 この勝利によってVKLiooonは賞金20万ドルを手にしただけでなく、プロの道へ進むという決断が正しかったことを証明してみせた。

 大会終了後、彼女はブリズコンに集まった観衆に対して、これまで参加してきたハースストーンの大きな大会で、男性プレイヤーたちから「ここは君の来るところじゃないよ」と言われてきたことを明かした。

 また、VKLiooonは感極まった様子で「Eスポーツの大会に出たいと夢みているすべての女性に伝えたいわ。性別なんて忘れて、夢を掴みに行くのよ!」と続けている。



 VKLiooonは1996年、中国の新疆ウイグル自治区で生まれた。9歳の時に両親が離婚し、以来母親と二人で暮らしてきた。高校の時に中国のカードゲーム、『三国殺』と出会う。ハースストーンをプレーし始めるのは、重慶の西南政法大学に入学してからだ。

 「ゲームのビジュアルが気に入ったのでプレーを続けたの」とVKLiooonはONE ESportsのインタビューに語った。「最初はダストが足りず、特定のカードをつくることができなかったので、とても苦労したわ。ゲームをプレーする知り合いもあまりいなかったので、攻略法を教えてもらうこともできなかったの。最初にレジェンドになるまで半年かかったわ」

 ゲーマータグを決める段になった時、彼女は迷うことなくVKLiooonに決めた。「中性的なIDが欲しかったのと、少女時代の『ライオンハート』という曲が好きだったので、Liooonを選んだの」と彼女。ちなみにVKの部分は所属チームのVictory Keyから来ている。

 VKLiooonは1年ほど遊びでハースストーンをプレーしたあと、プロの大会の観戦も始めた。プロの現場を間近で見るため、そして本格的な大会に参加する準備のため、中国で開催される『ゴールド・オープン・トーナメント』で事務方のアルバイトも始めた。

 このような大会の一つで、恋人のファン・“iG.Syf”・イィルンとも出会った。Syfは中国の強豪Invictus Gamingに所属するハースストーンのトッププロだ。彼女は自身の成功の大部分はSyfのおかげだと語っている。大会に出場するときには、長い時間をかけて一緒に練習してくれるのだという。

 「私は中国最高の選手はSyfだと思うわ」とVKLiooonは語る。

 2018年6月、彼女は『ゴールド・オープン・プロトーナメント』に選手としては初めて参加した。最初は緊張していたが、たちまちプロのレベルで頭角を現すこととなった。2019年には、中国で開催された3つの『マスターズ・グループ』のイベントでトップ6に入る好成績を収めた上、『ゴールド・オープン天津マスター・グループ』では優勝を遂げ、ブリズコンで開催される『グローバル・チャンピオンシップ』への出場を決めた。

Credit: Blizzard Entertainment

 ブリズコンでは初戦から2連勝と好スタートを切った。2017の世界王者であるチェン・“tom60229”・ウェイ・リンをスイープしたのを皮切りに、『ヨーロッパ・グランドマスターズ・シーズン1』の王者であるクリス・“Fenomeno”・ツァコポウロスもスイープし、グループBを首位で突破する。

 準決勝では『ヨーロッパ・グランドマスターズ・シーズン2』の王者、ケビン・“Casie”・エベルレインを接戦の末に3-2で下し、グランドファイナル進出を決めた。

 「対戦相手については、グランドマスターズでの戦いを分析していたので、どのように相手の攻めに対処したらいいのか、完璧に理解していたわ」

 VKLiooonがハースストーンの最高峰の舞台で、自身の憧れの存在たちと戦うことに怖気づいていたとしても、それを表に出すことはなかった。

 『USグランドマスターズ・シーズン2』の王者bloodyfaceと対戦したグランプリファイナルでは、得意のEvolve Shaman、Quest Druid、Highlander Hunterを完璧に使いこなして、序盤から圧倒してみせた。

 第3ラウンドの中盤になると、VKLiooonのHighlander Hunterが、bloodyfaceのQuest Druidを相手に大きなライフのリードを奪い、勝負の大勢は決した。

 Highlander Hunterは中国のトップレベルでは人気のある手だが、欧米のプレイヤーたちはその効果を過小評価している。

 「中国と欧米の選手は対戦する機会が少ないため、欧米の選手は中国の選手たちの戦い方について思ったより無知だったりするわ。私たちは彼らのことをよく知っているのにね」とVKLiooonは語る。

 VKLiooonは今回の彼女の優勝が、他の多くの女子プロ選手にとって刺激となることを願っている。

 「ハースストーンをプレーする上で、女性だからといって不利なことは何一つない」とVKLiooonは語る。「もし本当にこのゲームを愛していて、男性の選手と同じだけの努力を費やせば、彼らと同じかそれ以上に強くなることもできるはずだわ」

 「すべての女性ゲーマーたちに言いたいのは、Eスポーツのキャリアには一定のリスクと困難が伴うけど、もし情熱があって、努力する覚悟もあるなら、困難なんて無視してもいいということよ」

 「とにかく自分がやりたいことを追求して欲しいわ」

READ MORE: ブリザードが『ハースストーン:バトルグラウンド』でオートバトルジャンルに参入!