これまで4大会連続で『リーグ・オブ・レジェンド・チャンピオンシップ・シリーズ(LCS)』のタイトルを奪取中とあって、LCS2020スプリング・スプリットを前にしたチーム・リキッドの前評判は非常に高いものだった。

 ところがリキッドは予想に反して最悪のスタートを切ると、ミッドシーズンに入っても調子が上がらず、さらにスーパースターのイーリャン・“Doublelift”・ペンが明らかなモチベーション低下をみせた上、そのDoubleliftと新ジャングラーのマッズ・“Broxah”・ペデルソンがうまく連携ができず、チーム7勝11敗でプレーオフ進出を逃すどころか、順位表でも下から2番目と低迷してしまった。

 しかしミッドシーズンにDoubleliftをチーム・ソロミッドに放出し、新コーチにジョッシュ・“Jatt”・リーズマンを迎えた今、チーム・リキッドは虎視眈々とサマー・スプリットでの名誉挽回を狙っている。彼らが改善しなければならないポイントを5つに絞って紹介しよう。


1. Jattがチームをリードする必要がある

Credit: Team Liquid

 Jattのヘッドコーチ就任はリキッドがミッドシーズンに見せた動きのなかで最も効果的なものだった。Jattがコーチを務めるのはこれが初めてだが、この元LCSの人気キャスターは、ゲームに対する並外れた知識と分析力で名を馳せている。

 この新ヘッドコーチは紹介ビデオのなかで、リキッドにプレースタイルを指示したり、特定の戦術を押し付けようとは思わないと語った。一方で、彼はチーム全員、つまり選手からコーチング・スタッフまで、すべてのメンバーの目標を明確化したいと語った。このように各自の目標を明確化して意思統一を図ることができれば、シーズンが始まってからもスプリング・スプリットで起きたような問題は起きないはずだ。


2. チームワークとコミュニケーションの向上

Credit: LCS

 Doubleliftはチーム・リキッドでの最後の日々について、リフト内外でコミュニケーションを欠いていたと回想した。チームとコーチが直接コミュニケーションを取らなくなったことで、チーム・ケミストリーに多くな影響を及ぼしたというのだ。

 失意に終わったスプリング・スプリットにより一部の選手は大きくモチベーションを下げてしまったようだが、リキッドのCEOであるスティーブ・アーランセットは、起爆剤としてエドワード・“Tactical”・ラをメインロスターに昇格させ、新たな血を入れることでテコ入れを図っている。

 新しいADキャリーがベテランに耳を傾けて彼らから学び、新しいヘッドコーチが明確な方針を打ち出すことができれば、リキッドはスプリング・スプリットを過去のものとして、心機一転して夏に向けて取り組み、新シーズンでは大きな飛躍がみられるはずだ。


3. TacticalはDoubleliftになる必要はないが、成長が必要だ

Credit: LCS

 Doubleliftにとってスプリング・スプリットは失意のシーズンに終わったものの、このADキャリーは常にダメージとキルでチームのトップに立っていた。Doubleliftが去った今、チームのADキャリーはエドワード・“Tactical”・ラが務めることになる。

 Doubleliftがベンチに回った際にTacticalのプレーを何度かみたが、ハイペースで攻撃を仕掛けるDoubleliftに比べ、Tacticalのプレーはややスローペースな印象を受けた。つまりこの19歳の若者は、前線というよりは深めの位置で構え、フィニッシャーというよりは攻撃のきっかけを創り出す存在としてプレーするべきだろう。

 最近のゲームでTacticalはミス・フォーチュンやカリスタを使って勝利していたが、試合全体を通してみると存在感は希薄だった。Tacticalとリキッドのサポートであるジョー・“CoreJJ”・ヨンインは、ディフェンシブなボットとしてプレーするのが最適かもしれない。


Broxahがリーダーにならなければならない

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 Doubleliftなき今、Broxahにはチームのリーダーとしての役割が求められることになるだろう。スプリング・スプリットでの北アメリカ・デビューは華々しいものとはいかなかったものの、このEU屈指のジャングラーに備わった攻撃力を思えば、チームの急先鋒としての活躍が期待される。

 TacticalがADキャリーのポジションに適用するまでの間、チームはBroxahのコミュニケーション力とセットアップの技術に頼ることになる。ジャングラーとしてはセーフ・サイドを重視するが、今季の目標はトップとミッドレーンでより多くのキルを演出することになるだろう。この戦術変更によってジャングルでのプレーやマップ支配が遅れることが予想されるが、ニコラフ・“Jensen”・イェンセンとユン・“Impact”・イオンヨンの2人は攻撃力を活かせるようになるに違いない。また、ドレイクについてはボットレーンに任せるのが最善だ。

 ゴールド獲得はボットレーンに任せ、JensenとImpactは相手にダメージを与えることに専念し、BroxahとCoreJJはチームファイトで前線を担うことができれば、チームシナジーは大きく向上するはずだ。


5. 取りこぼしをなくす

Credit: LCS

 LCSにはイーヴル・ジーニアスズやクラウド9といった強豪が揃う一方、リキッドであれば簡単に勝てるはずのチームも多く存在する。

 その点についていえば、リキッドには継続的に勝利するための必勝パターンが必要になるだろう。チーム全員がワールドクラスの選手であることを考えると、戦力が劣るチームを相手に負けることは許されない。Broxahがリーダーシップを発揮し、Tacticalがボットレーンで気を吐けば、ポストシーズンには問題なく進出するはずだ。

 チーム・リキッドは6月14日に開催されるサマー・スプリット初戦で、Doubleliftが加入した因縁のチーム・ソロミッドと対戦する。試合の模様はLCSの公式Twitchチャンネルで視聴可能だ。